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月琴~つきのこと~

第1章 第一話【宵の月】 一

「どちらにしたところで、俺たちには未来はありません。お嬢さまはこの信濃屋の身代を継がれる身、俺は下仕えの端くれにすぎません。自分の立場を考えれば、本当はこんな気持ちをお嬢さまにお話しするだけでも畏れ多いことです」
 小文は息を呑んだ。では、治助もまた小文を好きだと言いながらも、身分が違うというただそれだけの理由でみすみすこの恋を諦めるつもりなのだろうか。

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