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月琴~つきのこと~

第2章 第一話【宵の月】 二

 月が出ていた。
 紫紺の空に浮かんだ月は数日前よりは幾らか厚みを増し、銀色の光を鈍く放ちながら中天にかかっていた。
 小文は月を見上げて、小さな吐息を洩らした。治助をこの前ここに呼び出した夜は二分咲きだった花は、既に満開を迎えようとしていた。銀の光を浴びた花が闇の中で淡く光っている。たわわについた花を小文は息を呑んで見つめた。

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