テキストサイズ

月琴~つきのこと~

第2章 第一話【宵の月】 二

 母も出入りは差し止められているらしく、小文は一人で父の部屋に入った。
「お前は自分のしでかしたこと―、いや、己れの立場が判っているのか」
 唐突に言われ、小文は頷いた。
「はい、十分に存じています」
 その返答に、惣右衛門の眉がつり上がった。
「十分に判っているだと? 十分に判っているなら、何故、下男風情と情を通じるような馬鹿な真似をした」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ