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月琴~つきのこと~

第2章 第一話【宵の月】 二

 治助への手紙に、小文はすべてのものを棄てると書いた。信濃屋の奥まった一室で過ごす間中、小文は治助のことを考えていた。どれだけ閉じ込められようと、治助への想いは変わらない。かえって、外部の一切のものと隔絶されたことで、余計なものを排他し、己れの心が透明になり、治助への想いを再確認できた。

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