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5つの恋のカタチ

第4章 この愛さえも、DNAで決まるのか。




―コンコン


「…はい」

―キィ…バタン


「…やぁ」

『こんにちは、リュウ』

狭い部屋。

置いてあるのは画材道具だけ。

そこらじゅうにあるのは、彼、
リュウの描いた手の絵。

彼がなぜ手の絵ばかりを描いているのかは知らない。

そんなこと知る必要がないから。

あたしがここにくるのはただ、彼に会いに来ている、それだけだから。

なぜ彼が絵を描くのか、

手の絵ばかりなのか、




…二重人格なのか、



なんて、知る必要性は欠片だってない。


『その絵は…?』

相変わらず、キャンパスに向かう彼の隣に腰を下ろして絵を覗き込む。


彼が描く絵は何も手だけではない。


でも、そこには何が描かれているのかは分からない。

ピンクや赤、白

色んな色が柔らかい曲線を描いている。



リ「…愛、かな」

うっすらとした笑顔で彼は筆を離した。

『愛…?』

…あたしには少し難しいみたい。

出来上がったんであろうその絵をまじまじと見つめる。


リ「クス、君にはまだわからないかな…」

少し顔を歪ませてあたしは彼を見る。

リ「フフッ、この絵はね、まだ完成じゃないんだ」

絵の具の乾いた部分を撫でながら彼は小さく呟いた。

『え…?』

まだこの絵には、続きが…?


あたしも彼が撫でた絵を見つめて小さく声を漏らす。


『…愛』

リ「そう、愛」

彼はまた筆を握ってあたしの顔を見た。

リ「それには君が必要だ…」

そっと、空いたほうの手であたしの頬を撫でる彼。


『…え?』

それってつまり、

リ「モデルを頼むよ?」

優しい笑顔で彼は首を傾けた。


『…モデル、って……!』

そんな、あたしには無理だよ。

リ「お願い」

彼はまだあたしの頬を撫でる。

『……!そんな、あたしモデルになんて向いてないし…、』

どんどん顔が赤くなる。


リ「大丈夫…、君はすごく綺麗だ」

彼の直接的な言葉があたしをくすぐる。


『…ん、…分かった…』


彼は嬉しそうに微笑んで手を離した。




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