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5つの恋のカタチ

第1章 差出人不明のタロットカードが届く時 連続殺人の幕がひらく






柔らかい物腰。

優しくて、綺麗な顔立ち。


領「大丈夫ですよ。僕に任せてください」
笑顔で、優しい声でそう言ってくれた。


でも、

その瞳の奥に冷たく光る何かを見た。



この人は何かを抱えてる。

直感でそう思った。

そう。思っただけ。


この人はきっと『笑ってない』。


母を亡くして何もかもを失ったあたしには少し、分かる気がした。





そして、

そんな彼に次第に惹かれていくこととなった。




3年後、


彩「領!まだ?!」

彼の部屋に勝手に押し掛けたあたしは仕事を続ける彼の隣に座った。

領「『まだ』って…、僕は約束をした覚えはないですが…」

呆れた笑顔で彼はあたしを見る。

…違う。
これじゃない。


彩「早く!そんなのさっさと終わらして!テキトーでいいじゃん!」

あたしには分からない難しい書類を指差して彼を促す。


領「…大切な仕事なんですから…。出来ませんよ」


相変わらずあたしには興味無さげに書類に目を通す。


彩「……領はいーんだ…」

領「はい?」

小さく放ったあたしの呟きを彼は拾ってあたしを見る。


彩「…………仕事…、ばっかりじゃん…。あたしが来てあげたのに…」

領「来て『あげた』?」

不適な笑みを浮かべて彼は頬杖をついた。

彩「……いいよ…。もう…。邪魔なら帰るから……」

あたしは肩を落として立ち上がろうとした。

-と、

―グイッ!


彩「っ!」

腕を引っ張られてつい、腰を下ろしてしまった。

彩「…領…?」

顔の距離が近い。

やっぱり領の顔は綺麗。

領「うるさいお口ですね…。おまけに…、拗ねたんですか?」

領はあたしの顎を掴んで、更に顔を近づけた。

彩「…ぁ、領、」

柔らかい感触がして、そっと離れる。



領「……邪魔?」

領はあたしの顎から手を離してそっと頬を撫でる。




領「誰が笑えるようにしてくれたと思ってるんですか?」




そう。



あたしが見たかったのは、



この笑顔。




-F i n *



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