夢見るシンデレラ。
第3章 *魔法使い...
『山本さん!!203号室の検温終わったの?』
「・・・あ!!」
『あ!!じゃないのよ。
のんびりおせんべい食べてる場合じゃないでしょ!今すぐ行ってらっしゃい!!』
「すみませーん!!」
看護師の夢を叶えて半年が経ち、社長と別れた4年間の月日はあっという間だった。
この日と決めた約束の日があるわけじゃないし、迎えに来てくれるという確信なんてもちろんない。
『もうすぐ春が来る』
「え?」
検温中に呟く患者さんの言葉に窓を見るが、外は雪景色で冬真っ只中ー・・・
「田中さん、今はまだ1月ですよ。
これからが冬本番です。」
体温計を抜いてパジャマの前を閉めると、入れ歯を見せて優しく笑う田中さんに微笑み返す。
『いや、確かに春が来る。
君が待ちわびてた春がすぐそこに見えるんだ。』
田中さんの家族が前に言ってた。
彼は昔から、何かと人の運勢を占うことが大好きだったとー・・