テキストサイズ

空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第2章 第一話【空の記憶】~運命の嵐~

 いわば、二人の婚約は親同士が取り決めたものであるが、控えめな気質で優しい進一郎を幸は実の兄のように慕っている。七歳年長の進一郎が将来の良人という実感はいまだなく、恋をしているときのような高揚感やときめき―もっとも、幸は生まれてからこれまで十六年間、まだ恋というものを経験したことがないので、よく知らない。あくまでも恋物語を読んで恋に憧れを抱いている少女にすぎない―を彼に対して感じたことはない。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ