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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第9章 第三話【波の音】 絶望の果て

 二人は薄い夜具の中で幾度も抱き合い、烈しく求め合う。情事が終わった後、必ず幸は虚無感に囚われた。いくら乱れまいとしても、身体はうっすらと染まり微熱を帯び、胸許や首筋に夜の名残をはっきりと示す紅い花びらが刻印されている。それは幸にとって浩三への裏切りの象徴であり、罪の何よりの証(あかし)でもあった。

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