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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第2章 第一話【空の記憶】~運命の嵐~

 穏やかな冬の陽差しが甲板に降り注ぎ、幸は、思わず船先近くまで行った。両手を水平にひろげ、真っすぐに立つと、風を受けて進む船と一体になったような心地良さと不思議な高揚感を感じた。少し火照った頬に冷んやりとした海風とわずかに含まれる潮の匂いが何とも快かった。
 今、そんな静かに凪いだ様子とはまるで違い、海は獰猛な表情(かお)を見せようとしている。

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