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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第13章 終章【エピローグ】

 老婦人の手には小さな額におさまったセピア色の写真がある。老婦人は今、その写真を愛おしそうに眺めていた。写真には幸せそうに寄り添う親子の姿が映っている。
 ふいに老婦人がクスリと笑みを洩らした。背広姿の馴染まぬ浩三の居心地悪そうな表情は、何度見ても微笑ましい。浩三と並んで椅子に座った妙齢の女性―このうら若き女性こそが老婦人の昔である。良人と並んだ彼女の腕には赤ン坊の浩を抱き、浩三と彼女の丁度真ん中に幸太郎が立っている。

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