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ナーバス BREAK DOWN

第2章 解逅

屋上に出ると、そのまま出入口の後ろの貯水槽があって狭く、人目に付かない所へ連れ込まれた。

そこは古ぼけたベンチが一つあり、通称〈カップルシート〉と呼ばれている。

真実はベンチでは無く、貯水槽の壁に押し付けられた。

両腕を頭の上で押さえられ身動きを封じられる。

塚本はもう片方の手でさっき殴って、赤くなった頬を撫でた。

「痛いか?済まなかった。お前が俺を拒むから…もういいだろ?いつまで待たせんだよ…」



中高一貫の男子校で、下級生には中3まで手出し禁止の暗黙の了解にもかかわらず、塚本は真実の入学そうそう声をかけてきた。

一緒に入学した幼なじみの高木友紀(タカギトモキ)が、ガードしてくれたので、無理矢理付き合わされる事はなかった。

真実は中3になる頃に、前からの顔見知り(母親同士が友人)で塚本と同じ2コ上の生野漣(ショウノ レン)と恋人同士なったのだが、それを知った塚本の怒りは凄まじく、事あるごとに絡まれる。


その生野が大学進学のため渡米すると、当然のように真実に言いよってきた。

生野には待つ事も、追いかける事も連絡をとる事さえ、断られている。

完全な別離を言い渡された真実はひどく傷ついていて、塚本の事など考える余裕はなかった。

何度もそう断わってきたのだが、塚本には通じなかったようだ。

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