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近くて遠い

第4章 決意

────…


「桜子!氷まだなの!?」

「はい!すみません!」


「桜子!ぼっとしてないで、何か拭くもの!」


「あ、はい!」



オーナー兼ママである幸さんから借りたドレスで店内を駆け巡る。


もう1ヶ月が経とうとしているのにまだ慣れない。



「おぉ、桜子!忙しそうだな。」


「あ、拓也さん、お疲れ様です。」


時計を見ると丁度23時。
拓也さんがしばらく交代する時間だった。


「また先輩たちにパシられてるんだろ。
ちょっと、人使い荒すぎだよな。」


と店内をチラとみる拓也さん。


「いえ、私まだ見習いなんで大丈夫です!じゃあ行きますね!」


氷と布巾を持ってその場を去ろうと拓也さんに頭を下げた。



「あ、おい桜子。」



「はい!?」


「あんまり辛かったらちゃんとオーナーに言えよ。」



この店で初めて出会ったボーイの拓也さん。
最初は突っ返されそうになったけど、今では私の事を気遣ってくれる。


口元に少しヒゲを生やしており、顔は童顔で年齢がよく分からないが、多分二十代後半だ。


「ありがとうございます。」



私は拓也さんに軽く微笑むと再び桜子ー!と呼ぶ声を聞き付けてフロアに向かった。

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