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近くて遠い

第4章 決意

「は…ぁ……」



ひとまず緊張した空気から解放されて忘れていた呼吸をし直した。



「桜子、安心してる場合じゃないぞ……」



顔を青くする拓也さんを私は呑気に見上げた。



「あ、えっと…部屋につけろってあれ、指名ですか……?」




「何呑気なこと言ってんだ!」


「す、すみません!」


怒鳴る拓也さんに、私は再び身体を緊張させた。


「桜子、有川様はこのradice一番のゲストだ。」



「えっ?!」


この店で一番って

それって…



「先祖は元子爵、有川家の主人、大富豪なんて言葉で片付けられるようなお方じゃない。」



つらつらと語られる拓也さんの言葉が衝撃過ぎて、頭がクラクラする。



「とりあえず…
有川様のご指名だ…有川様の言う通り断ると言う選択肢はない…
オーナーに今話してくるから、桜子はすぐにVIPルームに行け。」



拓也さんはじんわり書いた汗をハンカチで吹きながら、フロアへ向かった。



「ちょっ…え?!」



ど、ど、どうしよう……


VIPルームなんて行ったことないし…


そもそもまだ接客について何も習ってないのに……



私は訳が分からないまま、とりあえず初めてのVIPルームに今度は転ばないよう気を付けながら向かった。

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