テキストサイズ

近くて遠い

第4章 決意

「近くに来い」



広い部屋の中二人になると、有川様は低い声で私に命令した。



「はい…」



私は気まずく感じながら、有川様の隣に人一人分を開けてゆっくりと座った。




「もっとだ!」



有川様はまた頭ごなしに怒鳴るので身体がビクッと震える。


これ以上、近くに……?



「すみません…」



私は怯えながらまた少しだけ有川様に近付いた。
すると、有川様は背もたれから身体をお越し、私の腰に手を回す。



え?



「ったく、手間のかかるやつだ!」



「きゃっ」



有川様は乱暴に叫びながらものすごい力で私の身体をグイッと引き寄せた。



反動で身体が有川様の膝に身体が乗ってしまった。




「すっすみませんっ!!」



慌てて身体を起こすと有川様はその美しい顔を私に近付いた。



ドキッ…


全てを見透かしたようなその瞳に捉えられて息ができない。



「すみませんばかり言うなお前は。」



「すみません……」



あ、また言っちゃった。



まずいと思いすぐに口を手で覆う私を有川様はなにも言わずに眺めていた。



気まずい雰囲気が流れる中、コンコンとドアをノックする音が響く。


誰だろうっ…



「失礼します」


私がドキドキとする中で上品な声が聞こえてきた。





「なんだ」



「お久しぶりです、有川様。うちの新人がご迷惑をおかけしたとか。
申し訳ございません。」



あ…
この淑やかな声…



幸ママだ…



私はようやく現れた幸ママの姿を見て安堵の気持ちが溢れた。



「全くだ。
氷をぶちまけられた上、酒を作れと言っても、近くに来いと言っても、すみませんすみませんばかりだ。」



っ…



私はまたすみませんといいそうになるのを堪えて下を見た。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ