無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

「先に着いてるんだって。だから大丈夫だよ。」

頭を撫でると隼人は安心したような顔をした。


「おや、そちらの坊っちゃんは……？」



「あ、弟の隼人です。」



隼人の背中に手を乗せて、そう紹介すると、古畑さんはそうでしたか…と少し困った表情をした。



そういえば、

隼人がいるってことちゃんと有川様に伝えていなかったかも…



「では、有川様がお待ちですので、こちらへ」


文句を言われるのかと少しびびっていたが、古畑さんは依然として優しいままだったので、私は安心しながら隼人の手を引いて古畑さんについていった。



え、映画みたい……



中に入ってから改めてその屋敷のすごさに絶句した。


洋風な作りで天井が高く、エントランスのシャンデリアは見たことがないほど大きくて、素晴らしい輝きを放っていた。



隼人もその広さに興奮しているようで、手を繋いでいなければすぐにどこかいってしまいそうなほどだった。



古畑さんに導かれてそのすごさを痛感するほど、

何か胸を締め付けるものがあった。


──────噂によると大切な人を次々に亡くしたらしいわ…

──────孤独……なのね




有川様に初めて出会った日幸ママが言っていたことを思い出した。



広くてとても素晴らしい屋敷なのに


それが逆に心を空虚にさせる。



まだあんなに若いのに、この家を一人で持っているなんて…


いつもただお酒を飲むだけで、楽しそうに笑うことは一切ないのも、何だか納得できるほど、屋敷に寂しさが満ち溢れているように感じた。

しばらく長い廊下を歩くと、一番奥の突き当たりのドアの前で古畑さんは足を止めた。



コンコン─…



「光瑠(ひかる)様、真希様がご到着されました。」



「入れ。」




中から聞こえた低い声にドキドキと心臓が早く動く。


ひかる……って有川様の名前かな……