
春の風
第8章 手に入らぬ心 side.林檎
『なんだこれ。 蓋が、開けっ放し。
しかも。洗い場が汚すぎる。いくら言えば分かるんだよ。』
「ごめんなさい。」
わたしと彼は。
毎日毎朝毎晩。同じやり取りしかしない。
おおざっぱのテンケイガタ、O型のわたし。
几帳面すぎる完璧主義者、A型の彼。
アワナサスギルわたしと彼は。
特に喧嘩もしないけれど。
特別仲良いわけではないのが明らかなのは、百も承知だ。
『君にはもう多くを望んでるわけではないっていったよね?当たり前を出来れば構わないって、話したろ?
僕が毎日疲れてるの分からないのか?』
「ええ、分かってるわ。次からは…。」
『それには聞き飽きたんだよ。
君は。何度言っても言うことを聞かない患者と同じだな』
