
春の風
第9章 回想 side.瑞香
「また、どうなさったんです?」
『あの。棚の書物を崩してしまって。』
「つまりは、あの人の並べていた順序を聞きたいと?」
『ええ。いつも悪いわね。』
顔をしかめる彼女。
彼女は、僕よりは年上なはずなのに、まるで年下のようにしか思えない。
不器用な彼女は、たびたび失敗をする。
自分で気がつく失敗は僕に訊いてあいつが知る前に処理をする。
しかし、それでも。
彼女とあいつは毎日同じやり取りをする。
不器用な彼女は、面倒くさい典型のあいつとは馬が合わない。
それは僕は愚か、親戚一同は皆承知しておろう。
