私の掏明くん
第22章 辛い記憶
千尋「会社を辞めようとは思わなかった
の?家族に相談するとか」
掏明「相談は出来なかった…貴子、妻は
息子の勉強で頭がいっぱいで、それに今
世の中不景気だし辞める事も…」
千尋「だから自殺を?」
掏明「楽になりたかった、この世から消
えたい…誰にも見えない…気づかれない
存在になりたかった…」
千尋「誰にも見えない、気づかれない存
在に…」
掏明「そして叶った」
千尋「でもどうして…どうして私にだけ
見えたんだろう、掏明の姿が…」
掏明「祈ったからかな」
千尋「祈った?」
掏明「誰にも見えない、気づかれない存
在になりたいと思いながらも誰かに気づ
いてほしい、そう思ったんだ…」