私の掏明くん
第22章 辛い記憶
千尋「…」
病室に入ると
まだ看護婦さん達が慌ただしく病室内を
行き来していた
邪魔にならないよう気をつけながら
ベッドに近づく千尋
カーテン越しに見える人影や話し声に
ドキドキしながら
そっと
ベッドの方に視線を向けた
千尋「…」
貴子「起きてても大丈夫なの?」
東矢「うん…ありがとう」
千尋「…掏明」
そこには
弱々しいながらも
元気そうに微笑む東矢がいた
その姿に安心し泣きそうになりながらも
必死に耐え
東矢へ近づいた千尋
だけど…
千尋「…」
貴子「千尋さん」
一輝「外で立ってたから呼んだ」
貴子「会社の同僚の川澄千尋さん、覚え
てる?」
東矢「川澄…川澄千尋…」
千尋「…」
目を覚ましたものの
家族の前だし同僚のフリをした千尋
だけど
東矢の反応は
意外なものだった…
東矢「…すいません…入院してる間の事
覚えてなくて…」
千尋「覚えてない…」