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不器用なタッシュ

第6章 不安

抱き締める腕の力が、抜けてくる。


唇を離すと香織が、泣きそうな顔で俺を覗き込んで 


「嘉之…。」


「…腹、減ったな…。」


落ち着いたら、飯かよ…案外単純だな…。


苦笑してしまった。


「う、うん…作るよ!ちょっと待ってて。お風呂でも入る?」


「…そうする…。」


「お風呂の中で、寝ないでね!」 


「寝てたら、起こせよ。」


香織の本気の心配に笑って答えて、バスルームへ向かった。




キュッ…。


シャワーの栓を回し、頭からお湯を打ち付ける。


デジャヴ…かな…さっきの場面、以前も何処かであった気がした…。


もしかしたら、あの時のアイツは、未来の俺の姿だったのか?


やっぱり、似すぎていたんだ…。


もし香織じゃなく、アイツだったら…。





俺はとっくに、狂っていたのかも…。

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