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不器用なタッシュ

第7章 歪

「…素材ですよね。今サンプルを…。」


香織は俺と目を合わせない様にして、背中を向け棚からカタログを出そうとする。 


その背中に久々に、名前を呼びかける…


「香織…久しぶり。」


近付くと、泣きそうな顔で一歩後退った。


チクン……胸の奥が、少し痛む。


安心させる為、笑いながら椅子を引き


「…座りなよ…体調どう?」


「だ…い丈夫。」


凄い警戒感だな……ここまで露骨だと、流石に罪悪感が湧いてくる。


取り敢えず香織は逃げずに、椅子に座ったのでホッとした。


俺は、床に膝を付けて立ち、机に腕を預けてバランスを取る。


座った香織と目線が、ちょうど良くなった。


目が合って、ジッと香織を見詰める……
パッチリとした猫目…最初会った時から印象的で目を引き…気になって仕方なかった…。


「香織…ごめんな…。」


自然と、言葉が口を衝いた。

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