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不器用なタッシュ

第7章 歪

ガッチリ抱き締めてるのに、香織は暴れて帰ろうとする。


「嫌っ!離してっ!」


泣いてる?


「香織、こっち向けよ!」


顎を掴んで顔を向けさせると、瞼が真っ赤に腫れていた。


「嫌っ!!」


香織は必死に横に背けようとする。


「ずっと、泣いてたのか?」


胸の奥が満足感で支配する。


元木へのヤキモチ?


それで、こんなにボロボロになるまで泣いていたの?


自然と口元が弛む…俺の事でいっぱいになって、苦しんでる香織が愛しくて仕方ない。


そんな俺の顔を香織は、眉間に皺を寄せて見て


「お願い…帰るから、離して!」


まだ帰ろうとしていた。 


「なんでだよ。久々なんだから、ゆっくりして行けよ。」


今すぐ押し倒したいくらい、気持ちが躍動してきた。


「顔…顔酷いから…嫌っ…。」


表情を歪める香織…照れてるのか…。


「大丈夫だよ…可愛いよ。」


本当に、可愛い…。


俺は腫れた瞼に…キスをした。

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