テキストサイズ

不器用なタッシュ

第7章 歪

ほんの一瞬…香織が、固まる。


絶対的な証拠を与え続けて欲しい…。


それくらい…人からの愛情への確信が色褪せていく、インクみたいだった。


でも、インクはまた重ねたら、鮮やかに色付く…。


だから、何度も何度も…塗っていって…。


「ホント…だよ…。」


「ふ~ん…。」


『ホント』って…ナンダ?


「だから…信じて…。」


『信じる』って…ナニヲ?


香織は…もっと、他の事を言いた気だった気がする。


でも、俺の事を『好き』な気持ちを『信じて』と言った言葉を『信じれたら』と思った。


「分かった…。」


答えると、香織は意識が切れた様に眠りに着いた。


目を閉じた香織の長い睫毛をなぞりながら、このまま閉じ込めてしまいたくなる。


身体を縛っても、心までは縛れない…。


早く…香織を家にずっと居させるくらい…ずっと俺を励ますよう、地位や名誉も手に入れたい。




そんな欲望を抱えて、土日もずっと…腕の中に縛り付けた…。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ