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不器用なタッシュ

第3章 高校時代

家でクッキーを食べながら、今日の薄井との会話をリピートする。 


「何、ニヤニヤしてんの嘉之。」


兄貴が話し掛けてきた。


「えっ!してね~よ!」


「してるって!クッキー眺めてニヤニヤと。何これ手作り?」


兄貴は素早く一枚取って、口に放り込む。


「旨いじゃん!」


「何、勝手に食ってんだよ!」


ムキになる俺に


「な~に!彼女から貰ったのか?」


「違げぇよ!」


「違うなら…片想いか?」


「なっ!」


顔が熱くなるのが分かる。


「はぁ~ん!まっ、頑張りたまえ!」


「おいっ!」


笑いながら、茶の間を出て行く。


たくっ!安岡といい、兄貴といい…人の事で面白がりやがって…。


クッキーを一口かじり


「片想い…か…。」


口と胸の中に、仄かな甘さが広がった。


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