テキストサイズ

不器用なタッシュ

第9章 霹靂

取り敢えず…ゆっくり会える時間を確保しないとか…


「あぁ、中華パーティーだろ。土日は空いてる?」


「まだ、分からない!今日次第かも!」


香織も中々粘るな…


「…分かったよ」


「じゃ…送ってくれて、ありがとう…またね!」


俺は車から降りようとする香織の左手を強く握りしめ


「香織!」


「な…なに…」


大き目な声で呼んだせいか、香織は肩を震わせて驚き目を見開いた。


「色々、待たせて悪かったな…。でも俺…香織なら待っててくれると思ったからさ」


本心だ…


本当に香織だけは…俺を待っていてくれると思ったんだ。


「ま…待たせたって…」


香織は凄く緊張した面持ちで、俺の言葉の奥を探っている。


そう…いつだって…
その、瞳で…
俺の真意を見付け様としていた…。

その瞬間、どうしようもなく嬉しくなるんだ…。


戸惑う香織に、自然と笑みが浮かぶ。


「メールするよ」


仕方ないが、今日は…解放してやる…。


手をゆっくり離すと、香織は弾けた様に車から飛び降りた。


「またね!」


急いでアパートに入って行ったけど…


さて…この後どうするんだかな…。


俺は車内で、一人ほくそ笑んだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ