テキストサイズ

不器用なタッシュ

第14章 発動

香織は何かを探すように、視線を動かしだす。


「……何時?」

「十七時だよ……二時間位かな、寝ていたの……」


どうやら時計を探していたようだ。


自分のアパートは目の前なのに時間を気にしていることが少し癪に障ったが、お腹の子の存在が俺に気持ちの余裕を与えてくれた。


そう簡単には、小田切の所に帰らせない――――。


「余り寝れていないの?」


香織の体調を気遣うように問い掛けつつ、髪を払った手で頬を撫で上げる。


「大丈夫よ……。もう帰るね……。ありがとう」


鈍い動きで何とか車から降りようと身体を起こす香織の上に、俺は急いで覆い被さった。


逃がさない――――!


「ちょっと!」


驚愕している香織のお腹に、優しく手を置いく。


「香織……俺の子だよな?」

「なっ! まだ調べてない! 妊娠したかなんて分からない!」


また興奮してきた香織を宥めるように、自分の額を香織におでこに宛がう。


「妊娠してたら……産むの?」


静かに――重く。


香織に鎖を掛けていく――――。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ