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不器用なタッシュ

第15章 対決


『いいよ。取引先の所に寄った後なら時間作れるから、場所は俺が決めて良いかな?』


小田切はあっさりと、俺と二人っ切りで会うことを承諾した。


その声はやたら穏やかで余裕すら感じられて、いちいち俺の神経を逆撫でする。


それだけ俺がちっぽけな人間なのかもしれない――――。

あぁ、そうだよ。
俺は小せぇよ。
でけぇのは、背丈だけだ。


いちいち感情的になるのは一般常識的には好かれないだろうが、でもこれを形にするのが俺の生きている世界だ。


そんな俺を理解して全て受け入れてくれた香織を誰にも渡すわけにはいかないんだ――――。


「それぐらい察しろ。インテリ野郎……」


溢れてくる苛立ちに舌打ちしながら、インテリ野郎こと小田切が指定した場所のメモを無造作にズボンのポケットに突っ込んだ。


■□■□■□


カラン! カラン!


あいつが指定した場所は、昭和初期からありそうな喫茶店。


客が来るたび鳴る鐘の音に、いちいち反応してしまう。


敢えてこういう店を選んだんじゃねぇの?


――――そう思うくらい、呼び鈴が鳴る。

本当にあいつ、来るのか?

いきなり仕事が入ったって言って、ドタキャンすることだって出来るだろう?

俺の突然の我儘に応じてくれるのなんて、香織ぐらいしかいない――――。


寧ろそうしてくれた方が、思いっきり悪態をつけるのに――――あいつは期待を裏切って、約束時間の五分前に店に現れた。


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