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不器用なタッシュ

第15章 対決

カラン、カラン――――。

ドアの呼び鈴の音が響く。


客が来たか――――。


「いらっしゃいませ。一名様ですか?」 


客と店員とのやり取りの声が、妙に遠くに聞こえる。


暫くするとその客の靴音だろうか、カツカツと鳴らして勢いよく近付いてきた。


もしかして――――。


「香織……」

「えっ……香織ん!」 

「はぁ……見付けた……」


振り向いた先には、顔を真っ赤にさせて汗を流し、髪を乱した香織が立っていた。


怒っているのか、俺の大好きな猫目がいつになく大きく見開かれている。


そんな香織の姿が愛おしく思える反面、こんなに必死になって走ってきた目的が誰のものかと考えると、胸が締め付けられて息が詰まりそうだ。


ボロボロの香織の姿にさっきまで余裕ぶっこいていた小田切が、心配そうな形相で香織に問い掛けた。


「走ったの? 今日、行って来たんでしょ!」

「はい……行きました……」


行ってきた――――何処に?
用事があったのか――――?

あぁだから小田切は、香織に俺と会うことを香織に伝えなかったのか。

小田切のプライドって訳じゃないのか――――でも結局、二人の中だけで出来上がってんだよな。

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