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不器用なタッシュ

第15章 対決

二人の間にだけ流れる穏やかな空気が、俺の気持ちをどんよりと淀ませる。


だけどここで負けるわけには、絶対いかない。

俺は今まで、香織との夢を叶えるためなら何でもしてきたんだから――――。


沈みそうな気持ちを救いあげる思いで、小田切に勝負を挑んでいく。


「二人で会話成立させてんなよ! 香織、小田切さんには全部話したからな。だからもう香織に会わないですよね~小田切さん!」


さぁ――どう出る小田切。

妊娠のことまで知っておきながら、無責任なこと言うなよな。

俺の方が香織といるべき条件が揃ってんだから――――。


念を押すように答えを促して、どう出るか凝視していたが、小田切は特に気負った様子もなく余裕の笑みを浮かべた。


「嘉之くん……この香織の姿見て何とも思わないの?」

「あっ? 何だよ!」


香織の前だから格好つけているのか?


変わらず余裕そうなスタンスが、心底腹が立ってくる。


怒りを露わにしている俺に笑顔を向けたまま、小田切は言葉を続けた。


「確かに最近、香織は体調も悪かったし様子もおかしかった。飲み物や食べ物も凄い気を使ってたんだよ」


はんっ! 
とっくに妊娠のことは気付いていましたアピールか?


「だから? 何でも知ってますって~事? でも、お腹の子の父親は俺だよ」

「例え君の子でも、構わないよ。香織の子なら、俺が父親になっても」

「えっ……」
「なっ!」


小田切の言葉に、一瞬頭が真っ白になった――――。

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