不器用なタッシュ
第16章 切望
「あいつ……って何?」
小田切のことを詳しく知らない安岡は、さっき話していた香織の新しい『男』と直ぐには結び付かないようだ。
―――安岡には知られたらきっと、厄介なことになるだろう。
どうしてもここは、席を外して貰わないとな。
「安岡……有り難うな、ちゃんと話し合うから二人きりにして貰える?」
「あ……分かったよ。ちゃんと渡辺さんに、謝って仲直りしろよ……」
話し合うことを促してきた安岡なら、この申し出を拒むことはしない筈だと踏んでいたら、案の定安岡は心配そうにはしていたが、大人しく部屋を出て行こうとした――――時!
「安岡さん、待って! 一緒に話を聞いてもらえませんか!」
「えっ! 俺も!」
「お願いします!」
香織が安岡を呼び止める。
まさかの同席を頼まれて安岡は驚いて躊躇していたが、香織の無言の訴えに従いやがった。
「分かったよ……いいよ!」
おい! ふざけんな安岡!
二人で話し合えって言ったのは、お前だろ!
「安岡……頼む。二人きりでとことん話し合うから……」
またしても怒鳴りそうになる気持ちを抑えて、寧ろ泣きそうなくらいの演技で訴えかけた。
だけど鼻っから疑いの目で俺を見ている香織は、何とか安岡をこの場に引き留めに掛かる。
「安岡さん!」
「安岡っ!」
互いの思惑とは裏腹に、俺と香織の声が皮肉なくらい綺麗に重なった――――。
小田切のことを詳しく知らない安岡は、さっき話していた香織の新しい『男』と直ぐには結び付かないようだ。
―――安岡には知られたらきっと、厄介なことになるだろう。
どうしてもここは、席を外して貰わないとな。
「安岡……有り難うな、ちゃんと話し合うから二人きりにして貰える?」
「あ……分かったよ。ちゃんと渡辺さんに、謝って仲直りしろよ……」
話し合うことを促してきた安岡なら、この申し出を拒むことはしない筈だと踏んでいたら、案の定安岡は心配そうにはしていたが、大人しく部屋を出て行こうとした――――時!
「安岡さん、待って! 一緒に話を聞いてもらえませんか!」
「えっ! 俺も!」
「お願いします!」
香織が安岡を呼び止める。
まさかの同席を頼まれて安岡は驚いて躊躇していたが、香織の無言の訴えに従いやがった。
「分かったよ……いいよ!」
おい! ふざけんな安岡!
二人で話し合えって言ったのは、お前だろ!
「安岡……頼む。二人きりでとことん話し合うから……」
またしても怒鳴りそうになる気持ちを抑えて、寧ろ泣きそうなくらいの演技で訴えかけた。
だけど鼻っから疑いの目で俺を見ている香織は、何とか安岡をこの場に引き留めに掛かる。
「安岡さん!」
「安岡っ!」
互いの思惑とは裏腹に、俺と香織の声が皮肉なくらい綺麗に重なった――――。