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不器用なタッシュ

第16章 切望

「たった一枚で……人生狂わせる事、出来るよな」

「ちょ……何する気……」

「小田切が築いて来たもの……崩壊するかもね……」


俺の言わんとしていることを察した香織も顔が、一気に青ざめる。


「や……止めてよ……。どんな思いで頑張って来たか知らないクセに!」


はっ――――?

じゃぁ俺の頑張りはどうなるんだよ。

誰よりもそれを知っていたのが、香織だった筈だろ!


とっくに沸点に達していると思ってい怒りは、まだ臨界点があったようだ。


グツグツと――――何とも言い難い感情が、身体の奥底で煮え滾る。


「へぇ……じゃあ、お互い様だよな。あいつが先に俺の築いたモノ壊そうとしたんだから」

「何よ! 小田切さんは、何もしてない! 傷付いてた私を励ましてくれてただけじゃない!」


ドックゥン――――バァァァン!!


煮え滾っていたどす黒いものが、爆発する。


無意識に俺は、手に握っていたチューハイの缶を握り潰していた。


バシャッと水音がして、気付いたら手が濡れている。


何が起きたかを把握する前に、俺は爆発した怒りを感情のまま叫び出す。


「励ます? そんで、人の女と同居すんのかよっ!」

「きゃっ!」


香織が怯えていたが、暴走する憤怒のエネルギーをコントロールすることが出来ず、潰した缶を床に叩きつけた。

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