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不器用なタッシュ

第16章 切望

なぁ小田切、何で香織に手を出さねぇの?

中途半端なことするなら、最初から香織に手を出すなよ――――。


「香織ぃ~どうすんの~?」

「脱ぐわよ……」


言うことを聞くしかないと腹を括った香織は、ゆっくりとカーディガンを脱ぎだした。


結局俺の言うことをきく香織の姿に、優越感に浸れる――――どころか妙な虚しさしか込み上がってこない。


「ふっ……ひっく……」


大きな瞳を涙で濡らし、大粒の雫を落としながらブラウスのボタンを外そうとしているが、恐怖で手が震えて簡単に外せないでいる。


それでも何とかしようと両手を握り、震えを落ち着かせようと唇を嚙み締めていた。


あぁ――――なんて健気なんだろうな。

香織がここまでするのは全て――――アイツのためなんだよな。


「はぁ……ちゃんと、約束……守ってくれるの? 嘘じゃない保証あるの?」

「会話……全部録音してあるから、証拠にすればいいよ」


俺は腕を組んで壁に寄り掛かったまま、録音に使っている携帯に視線を投げた。


「はぁ……ぐすっ。分かった……」


携帯を見た香織は、微かに眉間に皺を寄せたが、直ぐに観念した表情を浮かべる。


そんなに信用ないのかよ、俺。

まぁ録音しているのは、小田切を叩きのめす材料にするつもりだったからだけど――――。

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