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不器用なタッシュ

第16章 切望

「ヒック……ヒック……」


何度も苦しそうに嗚咽を上げながら、香織はようやく一つ目のボタンを外した。


誰から見ても、ボロボロだ。


以前、俺の部屋で待っていた香織が大泣きしたのであろう、床に出来上がったティッシュの山と、一重になるくらい真っ赤に腫れた瞼を見せたことがあった。


帰ってきた俺に向かって感情的に泣きじゃくっていた香織が、凄く可愛くて愛おしく思えた。


誰かのために流す涙――――でも今流れている『それ』は、俺に向けられたものじゃないんだ――――。


二つ目のボタンに指を掛けられ時――――俺は、香織の胸元に手を伸ばした。


「な……何よ!」


襲われるとでも思ったのか、香織は悲鳴のような声を出す。


それが更に、俺を悲しくさせる。


「そんなに……怖いか?」

「え……」


目を見開く香織の顔に、俺自身の顔も近付けた。


涙で揺れる瞳に映る俺の表情は、歪んではっきりと見えない――――。


なぁ香織――――お前の中に、俺はもう存在していないの?


俺たちの『六年』の先に、未来にないのか――――?


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