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不器用なタッシュ

第16章 切望

俺は香織の手を握ったまま、声を絞り出していく。


「二年間……ずって待っててくれたのに……受賞した時あんなに喜んでくれて、プロジェクトの締め切りの時は忙しいのに……毎日身の回りのことしてくれて……出来上がった作品を泣きながら一緒に感激してくれたのに……あれ全部チャラにすんのかよ……」

「嘉之……。痛っ!」


感情が昂って、握る手に徐々に力が入る。


「全部チャラにして……小田切に行くのかよ……!」

「痛い……。嘉之……手、離して」


握られる手の力の強さに香織は顔を顰めるが、俺はその痛みから解放してやることが出来なかった。


「そんなに小田切が……大事なの?」

「お願い……。言うこと、聞くから……小田切さんには、何もしないで……お願いします」


俺たちこんなに辛いのに――――
苦しいのに――――
痛いのに――――

これも全て小田切のせいだろ――――!!


俺の必死の訴えに、香織はただひたすら大粒の涙を流して懇願してくる。


小田切のために――――。


あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!


「煩いっっ!!」

「きゃっ!」


ドンドンドンッ!!


喉の奥が切れそうな程の大声で怒鳴ったのと同時に、ドアを強く叩く音が鳴り響いた――――。


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