不器用なタッシュ
第16章 切望
その香織の様子に、俺よりも安岡の方が信頼されていることを痛感させられる。
安岡は床に手を伸ばしてカーディガンを拾い、香織の肩にそっと掛けてやると、俺の方に身体を向き直して説教をし始めた。
「嘉之……いい加減にしろよ! 渡辺さんずっと悩みながらも、おまえを信じて付いて来てくれてたんだぞ! 渡辺さんに見捨てられたら、もう他にここまでしてくれる人、現れないぞ!」
知ったふりしやがって――――だからこんな手を使ってでも、何とかしようとしてんだろが!
学生の頃からの付き合いの安岡にまでこんな風に言われて、理解されていない理不尽さに悔しくて、歯軋りするくらい奥歯を噛み締める。
「分かってんなら邪魔すんなよ! 今、今後のことも含めてやり直ししようとしてたんだよ!」
「ふっ……」
俺の必死の叫びに香織はまた瞳から涙を落とし、安岡は険しい表情になった。
「やり直し? 俺には強姦にしか見えないよ」
「あ~? 俺たちが、どうしようと勝手だろ!」
腐れ縁が故の、ど直球な言葉の応酬が始まる。
感情のままに激怒する俺を相手に、安岡は全力でぶつかってきた。
「勝手じゃない! 少なからず、渡辺さんはボロボロだろ! こんな関係なら、解放してあげろよ!」
自分でも心のどこかで認めなければばならないと思っている現実を改めて第三者に突き付けられると、却って受け入れられない――――。
安岡は床に手を伸ばしてカーディガンを拾い、香織の肩にそっと掛けてやると、俺の方に身体を向き直して説教をし始めた。
「嘉之……いい加減にしろよ! 渡辺さんずっと悩みながらも、おまえを信じて付いて来てくれてたんだぞ! 渡辺さんに見捨てられたら、もう他にここまでしてくれる人、現れないぞ!」
知ったふりしやがって――――だからこんな手を使ってでも、何とかしようとしてんだろが!
学生の頃からの付き合いの安岡にまでこんな風に言われて、理解されていない理不尽さに悔しくて、歯軋りするくらい奥歯を噛み締める。
「分かってんなら邪魔すんなよ! 今、今後のことも含めてやり直ししようとしてたんだよ!」
「ふっ……」
俺の必死の叫びに香織はまた瞳から涙を落とし、安岡は険しい表情になった。
「やり直し? 俺には強姦にしか見えないよ」
「あ~? 俺たちが、どうしようと勝手だろ!」
腐れ縁が故の、ど直球な言葉の応酬が始まる。
感情のままに激怒する俺を相手に、安岡は全力でぶつかってきた。
「勝手じゃない! 少なからず、渡辺さんはボロボロだろ! こんな関係なら、解放してあげろよ!」
自分でも心のどこかで認めなければばならないと思っている現実を改めて第三者に突き付けられると、却って受け入れられない――――。