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身代わり妹

第5章 揺心

グイッ

立ち上がった私の腕を、凌太が掴んだ。


「は…離して…」

振り解こうとすれば、余計にグッと力を込められる。


「凌太……?」

不意に、ギューっと強い力で抱きしめられた、


「凌太⁈ 離してっ‼︎」

ナースステーションで抱き合うなんて誰に見られるかわからない。

私は凌太の腕から逃れようともがく。



「嫌だ」

「え?」


凌太の声が震える。


「凌太…?」

「美優……俺はっ…」


潤んだ瞳で、凌太が何かを言いかけたその時、


ビービービー

鳴り響くナースコールにお互い飛び退いた。



「うっ……」

まただ……。

突然の吐き気に襲われる。

慌ててナースステーション内の水道に縋った。


吐くまではいかないけど、吐き出したくて苦しい感じ。

ストレスなのか最悪の体調を凌太には知られたくなかった。


でも、

私の吐き気が治まるまで、凌太はずっと背中をさすっていてくれた。


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