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身代わり妹

第7章 喪失

<side 凌太>


月曜……

大学病院でまでワガママは言えないだろう。

だから、美姫が転院する今日…

今日こそは美優にプロポーズする。

深呼吸をして、ポケットに忍ばせた指輪をそっと指でなぞった。



そのために、

絶対にやり遂げなきゃいけない事がある。

美姫の大学病院への転院だ。



「嫌よ! 別れない!」


朝早く美姫の病棟を訪ねた。

別れを告げた俺に、美姫から思った通りの返事が返ってきた。


「ごめん……茶番だってわかっててももう付き合えない」

しがみついてくる美姫を引き剥がす。


「茶番? 私の気持ちを疑うの⁈」

美姫は息を荒げ、俺を睨み付けていた。


「お前が欲しいのは俺じゃなくて、美優の健康な身体だろ。その考え自体間違ってる」

「嫌よ、嫌! なら大学病院にも行かない! 治療も受けない!」


美姫に俺の声なんか届かない。

二言目には ”治療拒否” だ。

だから、ここにいる間は決断する事が出来なかった。

でも───…



「……勝手にしろ」

「凌太⁉︎」


大学病院は入院費が高額だ。

今までのように美優の負担を減らしてやれなくなる。

そうなれば、美優は今よりもっと無理をする。


だから、ずっと反対してた。


でも、美姫の転院が決まったのならこの関係を清算し、俺は全力で美優を支える。

美優がプロポーズを受けてくれれば、美姫の入院費は俺が払う。

美優はもう無理する必要もなくなる。



「嫌っ、凌太‼︎」

嫌がる美姫を、大学病院から迎えの車に押し込む。


「置いてかれても困るの!」

ドアが閉められる寸前、美優の母親も慌てて車に飛び乗っていた。



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