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身代わり妹

第8章 本心

「美姫さんにはもう、移植に耐えられる体力は無いでしょう。それに、移植には大変なお金が掛かるのも事実です。失礼ですが、入院費を滞納されている方がそれを用意出来ますか?」

ため息交じりに担当医が母親を説得する。


「出来ます! いえ、させます! 美優さえ居ればっ、お金も心臓も必ず用意させます!」

余りにも理解を超える話に、俺も担当医も言葉を発せられなかった。



「……美優が生きていく為の臓器を奪う手術の費用を…美優自身に用意させるのか? お前はもう母親じゃない…いや…人間じゃないな」


冷たい声に振り返れば、美優の父親が立っていた。

美姫の危篤を聞き、俺が連絡を入れていた。


「すみません、美姫の入院費は私が用意致します。治療に関しては先生にお任せします。どうぞ宜しくお願いします」


担当医に深々と頭を下げる美優の父親。

その瞳には涙が溜まっていた。



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