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身代わり妹

第8章 本心

美優の使っていた寮の部屋へと急ぐ。

鍵はこちらで保管しているが、いつ美優が帰って来てもいいようにと凌太の頼みで開けている。


ガチャッ

ドアを開け、中の様子を伺う。

電気が点いていないところを見れば、母親はいないようだ。


部屋の中へ入れば、母親が生活していた様子が見れる。

美優は見習いたいくらい片付け上手で、部屋の中や冷蔵庫の中まで、本当に綺麗に整頓されていた。

でも今は、

見る影もない程、部屋の中はゴミで溢れ返っている。

よく美優に持たせていたおかずが食べ散らかされ、その容器や食器が流しに山のように積まれている。


調理器具は美優がいた頃のまま、綺麗に磨かれて片付けられている。

という事は、美優の母親は自炊していないのだろう。

コンビニやスーパーの袋に押し込まれた惣菜容器や割り箸が袋を押し破っている。



美優の母親には帰る家がないのか……。

美姫さんに付き添い29年間ほとんど帰らなかった嫁ぎ先には、今は別の奥さんとその子供達がいる。

荷物を運ばれた先の実家にも、兄夫婦が住んでいると聞く。


帰りにくいのだろう。

だけど、

彼女がここにいれば美優は帰って来れない。


ここは彼女の帰る場所じゃない。

美優の帰る場所だ。


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