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身代わり妹

第8章 本心

小さなテーブルの横に、座るスペースを作って美優の母親を待つ。

生ゴミから発せられる異臭に鼻がもげそう。


気を逸らそうと何気無くテーブルの下を見れば、

「─────探偵⁈ 」

驚いて声が漏れた。


無造作に置かれた数枚の探偵会社の広告。

まさか、

探偵を使って美優を探しているの⁈



「何してんの⁉︎」

勢い良くパンフレットを奪い取られる。

いつの間にか美優の母親がいて、私を睨んでいた。



「美優をそっとしておいてあげて」


美姫さんへ美優の心臓をあげるだなんて、

そんな恐ろしい事を本気で言っていたこの人が怖い。

美優を見つけてどうするつもりなの?

絶対に…この人の元へ美優を返してはいけない。



「美優をそっとしておく⁈ その間に美姫ちゃんに何かあったらいくらで責任取る気だ⁉︎」

「だからって、美優に何かしたら許さない」


思わず言い返す。

美優は私にとって娘も同然だ。

その笑顔と幸せを願わずにはいられない。



「私は2人の母親だ! 私が決める!」

「2人は立派な大人よ! 子供は親の所有物じゃない。生まれた瞬間からその子にはその子の人生があるの」


そう……

親になったのならそれは理解しなきゃいけない。

子供は親の ”所有物” なんかじゃない。



「うるさい! 出てけ!」

彼女が掴んだ私の鞄の中で携帯が鳴った。


「もしもし? 凌太?」

電話の相手は凌太だった。

上擦った声に嫌な予感を覚える。





『……母さん、美姫の母親に…連絡取って欲しいんだ。

………美姫が……

ついさっき



……死んだ……って……』




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