テキストサイズ

身代わり妹

第4章 現実

「美優!」

診察開始と共ににぎわう待合室に、元気な声が響く。


「わぁ! 花束が歩いてくる⁉︎」

花純ちゃんと共に立ち上がり、声のしたほうを見つめる。



大きくて真っ赤な薔薇の花束が、ユッサユッサとこちらに近づいて来る。


「え? 何?」

花束が私の目の前で止まる。


「美優、ごめんっ! 一日遅れたけど、お誕生日おめでとう‼︎」

花束の向こうから現れたのは、満面の笑みの奏佑くん。


「ありがとう」

嬉しい…でも、恥ずかしい。

はにかんだ笑顔で奏佑くんを見つめ、大きな薔薇の花束を受け取る。


「うわっ、その顔ヤバイっ! 抱き締めたいっ」

ジタバタと悶える奏佑くんは、やっぱり可愛い。



「奏佑くん、生活苦じゃなかったの? こんなに奮発して大丈夫?」

2週間近く仕事を休んだせいで、生活苦なんだと奏佑くんが言っていたのを思い出す。


「愛する美優のためだから!」


大勢の前で平然と言い切る奏佑くんは…


─────やっぱり可愛い。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ