イケない同棲生活
第4章 4――偽装生活
* * *
「遅れて、申し訳ありませんでした!!」
仕事の送り迎えもすると、徹底的に私を監視するつもりの男におぞましさを覚えつつ、会社に到達するやいなや、頭をさげる私。
周りの好奇な目も程ほどにしてほしいが…
「……」
部長の無言の威圧がめちゃくちゃ怖い…!!!
そうだ、この人普段は優しいけど仕事のことになるとほんっと怖いんだったっ!!
「…君」
「はっはいっ!!」
無言の威圧が続いた数分後。怒りを露わにした声が耳に届いて、怒られる!!と、ぎゅっと目を瞑った…その時。
「いいヒトを見つけたんだな…!」
「はいっ本当にもうしわけ………………は??????」
あまりにも見当違いの部長の言葉に、思わず謝罪の言葉がでそうになったけれど、すぐ後にマヌケな声が口から滑り落ちた。
え?いいヒト??誰?え?
目を瞬かせて下げていた頭を上げると、なぜかニヤニヤとした部長の顔があって。
「先程君の彼から電話があってね。君の代わりにと、謝ってくれたよ。僕の都合で君を遅らせてしまったと」
「う、嘘…」
聞かされた驚愕的事実に、私は口をあんぐりと開けた。
「本当ならそれでも遅刻したことの事実は消えないが、彼に免じて許してやる。その代わり、今日は残業してもらうからな」
「は…い」
仕事に取り掛かれ、と部長に言われるまで、私は暫く動けなかった。
”仕事なんてサボれば?”とかさっきまでほざいてたくせに、なんなんだ、あの男…。
まだ私はアイツの名前すらわからないのに、アイツは私のことはほとんど知り尽くして。
ずるい。自分勝手だ。
―――そう、思っても。私の口元は、微かに緩んでいた。
今日迎えに来てもらったら、一番にお礼を言おう。