イケない同棲生活
第4章 4――偽装生活
全部鞄も服も家にあるし、あわよくば帰らせてもらってすぐに遠くに逃げるという手もある。
ふ…ふふふ…。これはいけるんじゃないか?
「帰すわけねぇだろ」
が。
ギロリと切れ長の瞳で睨まれて、無残にも希望を切り捨てられ。
…いや、ま、まだ…!
「なんでよ!!服とか全部家にあるのよ?!」
と、抗うも。
「その心配はいらねぇ。荷物は昨日の内に全部てめぇの親父が送ってきた」
ガラガラガラッ
そんな大きな音をたてて、修正できないほど希望の光は崩れ去ってしまった。
…あんの…あんのクソ親父ぃぃぃぃぃぃ!!!!
「ま、諦めるこった。どう足掻いても、てめぇは俺から逃げることなんてできねぇよ」
そして――ガクリッと頭を垂らす私の耳元でそっと囁かれた時には、本当にそのような気がして、冷や汗しかでなかったのだった。