イケない同棲生活
第5章 罠
カアアアッと一気に上昇した顔の熱。
その熱い顔を隠すように、真弘の固い胸板に押し付けた。
そんな私を見た真弘が、頭上で小さく笑っていて。
「お前の望みなら」
少し体を離した真弘に、すいっ。顎を指で掬われ、触れるだけのキスが降って来た。
「真弘、」
「誤魔化しは許さねぇからな」
物足りなさに名前を呼べば、目の前の男は至極楽しそうに口角を上げた。
月明かりを背にした真弘の妖しい笑みに、また熱くなる頬。
まさか、自分から男の人に触って欲しいなんて誘う日が来ると思わなかった。
男の人に、こんなに触れたいと思ったのも。
綺麗だと思うのも。
全部全部、真弘がはじめて。
「――俺に言う前に気絶すんじゃねぇぞ」
だから。
羞恥心でいっぱいいっぱいだった私の耳に、真弘のそんな小さな声は届かなかったんだ。