イケない同棲生活
第5章 罠
私たちの住むあの大きな屋敷を目にした時には、既に理性なんてものはなかった。
大きな門を潜った時には、二人で絡まるようにして玄関に倒れこみ、
互いの服を脱がしあいながら、深い口付けを交わした。
そして、受け入れ万全の下半身に、するりと真弘の長い指が這って。
「…ンッ」
ピクリッ
体を跳ねさせると、真弘は意地悪そうに笑った。
ツゥーッ。
「ふ…ッま、ひろ、」
やっぱりまた、焦らすように膨らんだ蕾の周りを、円をかくように触れる真弘。
意地でもこの男は、全部話さない限りなにもしないらしい。
「ひとつひとつ、ゆっくり話せ。できたら褒美をやるよ」
「…わか…った」
チュク…と、溢れる愛液の音を微かに奏でさせながら、真弘は綺麗な顔を私の耳元にそっと近づけ、
「なんであんな泣きそうになってたんだ?」
ひどく優しい、擦れた声でそう囁いた。
<泣きそうになんてなっていない>って、いつもならそう跳ね返していた。
誰かに弱味を見せるのが怖くて。
恥ずかしくて。
けれど。
「――誰かに、つけられてる、みたいで」
「走っても走っても、誰かが追いかけてきてて、」
「真弘と会社でしてる時も、誰かが…っ」
「…ああ、わかった。だから、泣くんじゃねぇ。もう、大丈夫だ」
真弘の温かい体温が。
優しい声が。
傍にいるとわかる、鼻を燻ぶる落ち着く香りが。
私の口から、すらすらと言葉を吐き出させた。