イケない同棲生活
第6章 犯人追跡?
「…………は」
冬独特の静まり返った朝。
仕事着に着替え、昨日のこともあり憂鬱な気分でバックを肩にかけたところまでは、いつも通りだった。
いつも通りなら、部屋をでると縁側で着流しを身に纏ったヤツが煙管をふかしている姿がある。
そう、あるはずなのに。
「んだよ。ジロジロ見んな」
「・・・いや、いやいやいや。まだ夢を見ているのか私。なんだ私。荒ぶる親父のせいでとうとう幻覚まで見えるようになったの?」
目を覚ますのだ私。
だって、だって、
「病院に連れて行かれてぇのかてめえは」
「滅相もないけども!!だって!!」
な、なんであんたスーツなんか着てんのよぉおおお!!
ドサッと思わず鞄を落とし、ヤツの全身を大きく見開かせた目でジロジロと見る。
「…おい。見物料とるぞ」
そんな鬱陶しそうな声すら耳に届かない。
だって。あんた。
似合いすぎでしょうよ…。
すらりとした体のため、スマートに着こなすヤツに、開いた口が塞がらない。
いつもは無造作にしている髪も、少しセットされていて。
どこの王子様だと言いたくなるくらい、真弘はキラキラと輝いていた。
「しぐれは?!」
「しばらく従業員に任せる」
「あんた跡取りでしょ!!」
そんなサラリと”しばらく従業員に任せる”(←モノマネ)なんて言っていいの?!
「ぐだぐだ言ってんじゃねーよ」
「ぎょえっ?!」
すると、唖然として立ち竦む私の腕を掴んだ真弘が、小さく舌打ちをしたかと思うと、私の腕を強引に掴んで歩みを進めた。
「ちょっ!待ってって!どこ行くのよ!!」
そして、そう叫んだ刹那。真弘はぴたりと足を止め。
「お前の会社」
なんて、驚愕の言葉を言ったのだった。