イケない同棲生活
第6章 犯人追跡?
「な…んで…?」
行き場の無い手が浮遊する。
声が震えて、馬鹿みたいに動揺して。
「好意を持たれた上で、俺はお前を抱けない」
彼の冷たい眼差しに絶望した。
さっきまで熱をもっていた体が、さあーっと冷たくなってゆくのがわかる。
「真弘、」
「帰るぞ」
待って。待ってよ。
簡単に目を背けないでよ。
簡単に、そうやって離れていかないでよ…っ
「じゃあなんで…思わせぶりなことばかりするのよ…っ」
ぎゅっと、運転席に向おうとする真弘の袖を掴んで叫ぶ。
ぴくりと真弘の肩が揺れた。
…かっこ悪いってわかってる。でも、吐き出せずにはいられなくて。
「なんで私と同棲することに反対しなかったの?!いつも絶妙なタイミングで助けに来て…、なんなら、宮島楓との間に割り込んで―――」
ぼろぼろと涙がとめどなく溢れる。口にはいってきた生暖かいそれは、しょっぱかった。
「、」
そして真弘の大きな手が首裏に回され、距離が縮まったかと思うと。
「んッんぅぅぅ~ッ」
今までの優しいキスとは違う、乱暴なキスが降って来た。
呼吸もできぬほど、激しいソレ。
嫌だ。嫌だ。やめて。拒絶するなら、触れてこないでよ…っ!
私は無理矢理唇をこじ開けてこようとする真弘の唇を、思いっきり噛んだ。
ガリッ!!
「っ!楓!」
「…もう、期待させるようなことはしないで…っ」
ただ、こんな醜い自分を見られたくなくて。
私はそう叫ぶなり肌蹴た服のまま車を飛び出した。