イケない同棲生活
第7章 直弥
ああ、そうか。
そういう意味だったのか。
”好意を持った上でお前を抱く事はできない”
こう言ったのは、あの人が居たからなのか。
本当に好きな人がいれば、そりゃ、そうなるよね。
だったらはじめっから私に手なんかださないで、一途に思ってろよ。
優しさなんて、私に向けないでよ。
「ばか真弘…」
これ以上目にしたくなくて、聞きたくなくて、私はまた溢れる涙を拭い、
気付かれないようにこの屋敷から出た。
ごめん、ごめん真弘。
今日だけ、幼稚な女でいさせて。
明日からは我慢する。
二度と好きって言わない。
お父さんに”結婚しろ”って言われるまで大人しくする。
もう自分の身は自分の身で守るようにするから、お願い。
――お願いだから、
あの手で、違う人に触れないで…。