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秘め事は月の輝く夜に、あなたと~後宮華談~

第3章 すれ違う心

 可哀想によほど怖い目に遭ったのか、身体が瘧にかかったようにぶるぶると震えている。
「申してみよ。そなたの悪いようにはせぬゆえ」
 柳尚宮は手巾で明香の眼尻に溜まった涙を拭いてやった。
「今宵の事がそなたの意に反することであったというのなら、私はずっと伏せておいても構わぬ。不幸な事故に遭ったのだと思うて、そなたも早くに忘れることだ。私さえ黙っておれば、誰も知る者はおらぬ」

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